ケヴィン・オヘア


本記事では、アンドレイ・ウスペンスキーとエマ・コールダーが撮影しました英国ロイヤル・バレエ団芸術監督ケヴィン・オヘアのインタビューより一部を抜粋して掲載致します。

私がダンスを始めたのは5歳頃で、ロイヤル・バレエ・スクールには兄のマイケル(現在バーミンガム・ロイヤル・バレエ団に所属)と同時期に入学しました。ロイヤル・バレエ・スクールでの日々は楽しく、吉田都やヴィヴィアナ・デュランテと一緒に卒業しました。在籍中、マイケル・サムズ(前ロイヤル・バレエ団・プリンシパル・ダンサー)にとてもよくして頂いたことは幸運でした。当時の私はまだ身長が伸びているところだったので、それまでにパートナリングの経験はあまりありませんでしたが、マイケルはそんな私を見て、パートナリング・スキルが伸びるようにと様々な機会を与えてくれたのです。

私がこれまでのキャリアを歩んでこられたのはとても幸運だったと思います。フレデリック・アシュトン卿には高雅で感傷的なワルツで直接指導してもらいましたし、ケネス・マクミランともたくさんの作品でご一緒させて頂きました。私は若いころは大きな怪我は経験しなかったのですが、33歳の時に左膝には軟骨組織が残っていないことが発覚しました。どうしてももう一度踊りたくて手術を受けたのですが、術後目が覚めた時に、「あら、あなたダンサーだったのね。もう二度と踊れないそうね。」と看護婦さんから言われたことを今でも覚えています。怪我の間は多くの人に助けてもらいました。例えば、ランベール・ダンス・カンパニーのクリストファー・ノースに誘ってもらい、2か月程働いたりしました。封筒に書類を詰める作業からツアーのお手伝いまで、いろいろしましたよ。手術の後6か月程で再び踊れるようになったのですが、その頃には、ダンサーを続けていく限りは、「今日は大丈夫だろうか」、「自分にこれができるだろうか」という不安と常に隣合わせで踊ってかなければいけない、ということを感じつつありました。そのため、2000年にサドラーズ・ウェルズ・ロイヤル・バレエ団のニューヨーク・ツアーで引退することに決めました。ニューヨークならバレエ・ダンサーとしてのキャリアに幕を下ろす場所にふさわしいと思ったのです。

その後、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーで働く機会をもらい、ツアー公演の準備や財政面、教育、マーケティングなど様々な部署を経験させてもらいました。ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーには本当によくしてもらい、とても充実した日々でした。その後はバーミンガム・ロイヤル・バレエ団でカンパニー・マネージャーを務めました。3年間バーミンガムにいたのですが、とても楽しかったですね。バーミンガム・ロイヤル・バレエはツアー公演の多いバレエ団ですので、誰をどこに配

置して、いかに動かすかというのが主な仕事でした。デヴィッド・ビントレー(当時のバーミンガム・ロイヤル・バレエ団芸術監督)と働くのはやりがいがありましたし、多くのことを学ぶことができました。

その後、同じカンパニー・マネージャーの仕事がロイヤル・バレエで募集されたので、ここに移ってきました。仕事内容はバーミンガムにいた頃とはかなり異なり、シニア・マネージメントの要素が強かったのですが、バレエ団の方針を決定するプロセスに関われることはやりがいがありました。海外公演の準備も担当していたのですが、ある年、メキシコともう一か国に公演に行く予定だったのが、2か国目での公演はキャンセルになってしまいました。代わりに公演できる国を探すべく、その時の私は訪問販売のセールスマンのように、「ロイヤル・バレエですが、如何ですか?」と聞いて回っていました。その甲斐あって、なんとか、4か月後にアメリカでの公演にこぎつけることができたのです。このような経験ができる仕事を私はとても楽しんでいました。ですので、アドミニストレイティブ・ダイレクターのアンソニー・ラッセル⁻ロバーツが辞めた時に応募することしたのは自然な流れで、2009年から彼の後任を務めました。

2011年には、モニカ・メイソンがロイヤル・バレエ団の芸術監督から引退するとアナウンスしましたが、当初は応募する気は全くありませんでした。知り合いが応募すると聞いていましたし、それをサポートしたいと思っていました。しかし、その後その話がなくなり、何人かの人から「応募してみたら?」と言われたこともあり、締め切りの前日にパリのホテルの一室で応募書類を書いて送りました。そして、2011年に任命され、2012年に就任しました。すでにこのポジションに就いて8年も経つとは信じられません。その間に、仕事内容も大きく変わりました。ジャネッタ・ローレンス(前アソシエイト・ダイレクター)は私も含め4人の芸術監督と仕事をしてきたのですが、彼女は、時代とともに芸術監督の仕事内容が大きく変わってきたのはとても興味深いと常に言っていました。これは誰かから言われたことなのですが、「自分のやりたいことを8-10年経っても成し遂げられていないようなら、それはずっと実現できない」と。奇しくも、ここ数年を振り返ってみると、ロイヤル・バレエ団は本当に素晴らしい状態にあると強く感じています。それはそれでとても素晴らしいことなのですが、現在バレエ団はここまで来ることができました。さあ、次のステップは?