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Viviana Durante Company in Kenneth MacMillan's Laiderette. © Emma Kauldhar

マクミラン: Steps Back in Time


ヴィヴィアナ・デュランテの指導により、マクミランの初期の作品が再演。デボラ・ワイスがお伝えします。


 「ケネス・マクミラン:ステップス・バック・イン・タイム」と題する短いプログラムが、バービカンで上演された。ヴィヴィアナ・デュランテがロイヤル・バレエ、バレエ・ブラック、スコティッシュ・バレエのダンサーを集め、マクミランの初期の作品を復活させたものだ。

 マクミランのミューズの一人だったデュランテはこの企画を実現するのに最適な人物であり、振付家自身であればダンサーや上演チームに何を望んだろうかについて、並々ならぬ洞察力を備えている。上演の途絶えていた3作品による、休憩なし、1時間の今回のプログラムは多くの意味で啓示と言えるもので、示唆に富み、再演は彼女の手で見事な成果を上げた。

 最初の2作品は、全編ではなく部分的な抜粋。グリム童話に基づく『鳥の家(House of Birds)』(1955年)は、マクミランの将来の作風を明確に示す作品だ。パ・ド・ドゥは創意に富み、リフトの作り出す造形は美しく、頭と手の動きは断片化され鋭角的で、鳥を模した猛々しい動きは同時に叙情的で、急降下して人間を捉えるかのようだ。

 物語は、少女(ローレン・カスバートソン)を罠にかけ鳥に変えようとする鳥女(イチカワ・サヤカ)の企みを、最後には少年(ティアゴ・ソアレス)が愛の力で阻むというもの。女性の主役にとっては、マラソンのように過酷な作品だ。カスバートソンは終盤に至っても軽やかに空中を飛び回るかのようで、鳥に変身しだす最も難しいソロでは脆く壊れた動きを見せ、少女が感じる不快感が観客にも感じられた。ソアレスは逞しいパートナーであり、イチカワは突き出た仮面を被って凶悪な生き物を演じた。魔法にかけられた少年たちのコール・ドもすぐれていた。 

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マクミラン振付『ダンス・コンセルタント』でのホセ・アルヴィスと高田茜 © Emma Kauldhar

 2つ目の『ダンス・コンセルタント』(1955)のパ・ド・ドゥは、高田茜とホセ・アルヴィスが雄弁に踊った。私はこの作品の全編上演を1970年代にロイヤル・バレエ・スクールの学校公演で観ている。当時は非常にモダンに思えたが、その他の印象はあまりなかった。素早く、ポワント・シューズが砕けるような、突き刺す動き。ストラヴィンスキーの音楽が踊りを決定づけ、パートナリングの複雑さが、マクミランが1950年代後半にすでに、いかに大きなリスクを伴う振付を行っていたかを示していた。ニコラス・ジョージアディスのデザインは、観客の集中力を殺ぐところがあるが(本作は、二人の最初のコラボレーションだった)、これを取り払ってしまえば、現代の観客をも驚かせ、当代の最も優れた若手ダンサーにとって大きなチャレンジとなりうる作品だ。高田の美しいポワント、純粋なラインと細部への細心の注意に魅了された。


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Francesca Hayward and Thiago Soares in Kenneth MacMillan's Laiderette. © Emma Kauldhar

 マクミランは振付を初めた当初から、パトスと脆弱さに関心を抱き、限界を押し広げ、グロテスクあるいはショッキングな素材、アウトサイダーや複雑な人格、悲劇の主人公を好んで取り上げた。全編を再演した『レーデレット(Laiderette)』(1954)は、マクミランならではの驚くべき効果を上げた。タイトル・ロール(題名の由来となるlaideronetteは、小さく醜い者、を意味する)は、哀れさそのもののような存在だ。音楽はフランク・マルタンの「小交響協奏曲」。マクミランは各フレーズを大胆に解釈し、後に彼の大作に特有となる、音楽のクレシェンドとともにダンサーや観客が感情のジェット・コースターに乗って高下する感覚を生み出している。

 皮肉なことに、最後には禿頭になってしまい、一緒にサーカスで働く芸人たちからも、仮面舞踏会の観客たちからも拒絶されるほど醜いこの役を演じたのは、世界でもっとも美しいバレリーナの一人であるロイヤル・バレエのフランチェスカ・ヘイワードだ。元々の美貌のせいで、これが醜い人物だと信じるのには努力がいったが、ヘイワードはあるべき悲哀や脆さをもって踊り、役柄をよく表現した。はじめ動きはぎこちなく子供っぽいが、ゆっくりと大胆で大きなものへと発展していく。彼女の仲間の道化たちは惨めさや悲惨さを前身で訴えており、彼女がそこに馴染めないことは容易に見て取れる。仮面を着けた彼女に夢中になる舞踏会の主人を踊ったソアレスは、驚くほどの官能性とやさしさを表現し、彼女にアプローチするが、もちろん、仮面を取った途端に嫌悪感を抱く。振付の語彙についていえば、ニュアンスのあるフレージングと小さな手や脚の動きが役柄をよくあらわしており、マクミランの才能が若い時期から明らかなのを見るのはうれしかった。

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Ricardo Cervera in Kenneth MacMillan's Laiderette. © Emma Kauldhar

 この世代のダンサーには作品を踊る機会を、私達には見る機会を与えてくれたデュランテを、心から賞賛したい。今シーズンにはすでに、複数のバレエ・カンパニーが力を併せて大きな成果を挙げられることも証明されている。この公演が、さらに多くの作品の復刻へのスタートとなるよう祈りたい。(訳:長野由紀)