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Artistic directors and participants at Grand Audition 2018. © Emma Kauldhar

グランド・オーディション
Grand Audition


今年で三回目を迎える、有力カンパニーの合同オーディション。バルセロナからエマ・コールダーがお伝えします。


   かつては、そこそこの体型と技術のあるダンサーであれば、自国内にこだわらなければどこかのカンパニーへの入団は保証されていたようなものだった。だが、そんな時代は今や昔。過去50年間でクラシック・バレエは劇的に進化し、ダンサー志望者が増え、学校の数もプロになりたい卒業者の数も激増してきた。一方で、門戸も開かれてきてはいる。今も団員を厳密にその国の出身者に限っているのは国立バレエ団であってもごく少数で、ほとんどの監督は、ダンサーを国籍ではなく能力で選ぶようになった。

 とはいえ、現状では、バレエ団数の増加は、志望者の増加に追いついていない。しかもフランスやドイツではほとんどのバレエ団がより運営効率のよいコンテンポラリーの団体へと転向しており、クラシックのジャンルでは、新卒者と移籍を考えている人とを問わず、空きはどんどん少なくなってきている。時間と労力以外に旅費の問題もあり、求職活動には限界がある。

   その問題解決に踏み出したのが、ロイヤル・バレエの元プリンシパルのダヴィッド・マハテリだ。彼は同じく元ダンサーである妻ダリアとともに、3年前にブリュッセルでグランド・オーディションを創設した。

 方法はシンプルだ。就職したいダンサーを一堂に集め、団員を求めている芸術監督たちを招くのだ。監督たちの旅費や宿泊費は、参加者たちの登録料(複数のカンパニーを受けて回るのに比べれば、僅かな額ですむ)から捻出される。ダンサーの参加資格は、プロフェッショナル・レベルであり年齢が17〜26歳であること。そして監督の方は、契約を提示できること(もっとも、自分のカンパニーに合う人材がいなければ、無理に採用する必要はない)。双方にメリットがある。2016年の初回はわずか1日で開催された。誰の目にも慌ただしすぎたので、昨年からは2日間に分け、1日目はクラス審査、2日目はそこで選ばれた候補者たちによる舞台でのヴァリエーション審査が行われることになった。

 今年はオーストラリア、ブラジル、カナダ、コロンビア、コスタリカ、チェコ共和国、デンマーク、フィンランド、フランス、ジョージア、ハンガリー、イタリア、ラトヴィア、メキシコ、パラグアイ、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、ロシア、スロヴェニア、南アフリカ、韓国、スペイン、スイス、台湾、ウクライナ、イギリス、アメリカなどから、194人が参加。4つのクラスに分かれ、ユーリ・ファテーエフ、ニコラ・ル・リッシュ、エルンスト・マイスナー、カロヤン・ボヤジェーエフ、サンポ・キヴェラ、ルタ・ブトヴィリエネ、マリオ・シュローダー、シン・ペンワン、デニス・マトヴィエンコの9人が審査を行う。それぞれがヴァリエーションを見てみたいと思う人をリストアップし、70人が選ばれた。 

 バロセロナから車で少し行ったところにあるテアトロ・アウディトリ・サント・クガトは、この催しに理想的な会場だ。舞台は参加者の中で最も脚の長いダンサーが気持ちよくマネージュできるが、一人で立つダンサーをぽつねんと見せるほど大きすぎはしない。

 衣装は適切なものを着用のことと指示されたが必須ではなく、また残念ながら、賢明な選択をできなかったダンサーもいたようだ。サイズが小さすぎて身体に食い込んでいるのはいただけないし、また、楽屋の鏡で寄って見れば洗練されていても、舞台では違和感のある髪飾りもある。ほとんどの参加者は自分に合ったソロを選んでいたが、現在の身の丈に会わない技術的に高度なものを選んだ人もあった。監督がみたいのはあなたが「できること」であって、「できるかもしれないこと」ではないと、肝に銘じるべきだろう。そして、これは本当に重要なことだが、たとえばオーロラ姫のヴァリエーションのように有名な曲を踊るのであれば、絶対に振付を勝手に手を入れてはいけない。

 幸運なことに、2日目に進んだほとんどの参加者の踊りは感心させられるものだったし、その場で23人にオファーがあり、45人が監督との面談の機会を得たことにも水準の高さが現れている。もっとも高く評価された一人は、パリ・オペラ座バレエ学校とロイヤル・バレエ・スクールで学び、現在パリ・オペラ座のカドリーユのクロエ・レヴィヨンだ。魅力的で質の高い踊りを見せ、マリインスキーのユーリ・ファテーエフを含む7人の関心を集めた。2年前に出場した際には契約を取れなかったアナトール・ブレノーも、今回は自信と洗練を増しており、4つのオファーを得た。

 安斎織音のサクセス・ストーリーも紹介しておこう。昨年日本で行われたマハテリのワークショップを受講した彼女は、今回の催しにスカラシップを得て参加し、その結果、入団先をマリインスキー劇場にするかノヴォシビルスク国立バレエ劇場にするか選べる立場となったのだ。

 もちろんオーディションである以上、思い通りの結果が出なかった参加者もあった。だが、単に顔立ちや体型が監督の好みではないというだけで、ものの数分で退室を命じられてしまうこともままある中、この催しでは、全員が最後までクラスを受けて能力を示すチャンスを与えられ、三分の一以上がソリストとしての潜在能力を示すことができたのだ。これ以上は望むべくもないというべきだろう!(訳:長野由紀)

  バロセロナから車で少し行ったところにあるテアトロ・アウディトリ・サント・クガトは、この催しに理想的な会場だ。舞台は参加者の中で最も脚の長いダンサーが気持ちよくマネージュできるが、一人で立つダンサーをぽつねんと見せるほど大きすぎはしない。

 衣装は適切なものを着用のことと指示されたが必須ではなく、また残念ながら、賢明な選択をできなかったダンサーもいたようだ。サイズが小さすぎて身体に食い込んでいるのはいただけないし、また、楽屋の鏡で寄って見れば洗練されていても、舞台では違和感のある髪飾りもある。ほとんどの参加者は自分に合ったソロを選んでいたが、現在の身の丈に会わない技術的に高度なものを選んだ人もあった。監督がみたいのはあなたが「できること」であって、「できるかもしれないこと」ではないと、肝に銘じるべきだろう。そして、これは本当に重要なことだが、たとえばオーロラ姫のヴァリエーションのように有名な曲を踊るのであれば、絶対に振付を勝手に手を入れてはいけない。

 幸運なことに、2日目に進んだほとんどの参加者の踊りは感心させられるものだったし、その場で23人にオファーがあり、45人が監督との面談の機会を得たことにも水準の高さが現れている。もっとも高く評価された一人は、パリ・オペラ座バレエ学校とロイヤル・バレエ・スクールで学び、現在パリ・オペラ座のカドリーユのクロエ・レヴィヨンだ。魅力的で質の高い踊りを見せ、マリインスキーのユーリ・ファテーエフを含む7人の関心を集めた。2年前に出場した際には契約を取れなかったアナトール・ブレノーも、今回は自信と洗練を増しており、4つのオファーを得た。

 安斎織音のサクセス・ストーリーも紹介しておこう。昨年日本で行われたマハテリのワークショップを受講した彼女は、今回の催しにスカラシップを得て参加し、その結果、入団先をマリインスキー劇場にするかノヴォシビルスク国立バレエ劇場にするか選べる立場となったのだ。

 もちろんオーディションである以上、思い通りの結果が出なかった参加者もあった。だが、単に顔立ちや体型が監督の好みではないというだけで、ものの数分で退室を命じられてしまうこともままある中、この催しでは、全員が最後までクラスを受けて能力を示すチャンスを与えられ、三分の一以上がソリストとしての潜在能力を示すことができたのだ。これ以上は望むべくもないというべきだろう!(訳:長野由紀)