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YAGP Stars of Today Meet the Stars of Tomorrow Gala. Photo: Emma Kauldhar

ユース・アメリカ・グランプリ(YAGP)の、




スターズ・オヴ・トゥデイ・ミート・ザ・スターズ・オヴ・トゥモロウ・ガラ。

YAGP決選の最後を飾る毎年恒例のガラ公演、前半はコンクールの入賞者(Stars of Tomorrow)が、は世界各国で現在活躍するスターたち(Stars of Today)が出演します。4月16日にデイヴィッド・H・コーク劇場で行われた今年の公演には、クリスチーナ・シャプラン(マリインスキー)とカルヴィン・ロイヤル・III(ABT)、エフゲーニャ・オブラスツォーワとセミョーン・チュージン(ボリショイ)、テレサ・ライヒレンとザカーリー・カタザロ(ニューヨーク・シティ・バレエ)、メリッサ・ハミルトンとエリック・アンダーウッド(ロイヤル・バレエ)、イザベラ・ボイルストン(ABT)とキミン・キム(マリインスキー)らが出演しました。
 今年で16回目を迎えるユース・アメリカ・グランプリ(YAGP)は、アメリカを中心に各国で行われた予選の総参加者数が7,000人を超えるなど、年を追うごとに規模が拡がっている。4月10日から5日間にわたって行われた今回のニューヨーク決選は、アメリカやオーストラリア、そして日本や韓国といった常連国、躍進の著しい南米勢や中国に加え、トルコ等これまであまり馴染みのなかった国からのファイナリストたちのすぐれた資質が目を引いて、ますますの裾野の広がりを感じさせるものだった。
 ニューヨーク大学内スカボール・センターでの予選を経て、ニューヨーク・シティ・バレエの本拠地でもあるデイヴィッド・H・コーク劇場での最終審査(クラシック・ヴァリエーション)に進んだのは、ジュニア部門(12〜14才)の女子は25名。そのうち韓国のキム・シンヨンが、男女を通じて最もすぐれた出場者に与えられるグランプリを獲得した。たいへん高度なテクニックを持ち、『エスメラルダ』では、高々と上げた脚をじつにゆっくりと降ろして行く離れ業で出だしからいきなり場内を湧かせた。第1位はアメリカからの二人が分け合ったが、ジュリエット・ボスコは難曲『グラン・パ・クラシック』で12才とは思えない完成度とエレガンスを見せ、マギー・シャドボーンは、『海賊』での軽快なアクセントや回転の美しさが印象的だった。第2位の日本の山田ことみはつま先が美しく、全身のコントロールもみごと。伸びやかで表現力もあり、自身の個性に合った『ディアナとアクテイオン』という選曲にも好感が持てる。エスメラルダ』を踊った 第3位の韓国のシム・ヨジンは、小柄ながら大きな開脚や強いつま先が目を引くテクニシャンだ。
 ジュニア男子は10人が進出。広い舞台で、予選よりいきいきと個性を発揮できていた人が多かった。第1位はアメリカのリアム・ボズウェル、『パリの炎』での瞬発力やクリーンな踊りが魅力で、将来性を感じさせるダンサーだ。『サタネラ』を踊って第2位に入ったブラジルのヤゴ・グエラはすらりとしたラインや柔らかいプリエが目を引き、一瞬にして客席を引き込む愛嬌ある個性の持ち主。第3位は『ラ・バヤデール』を踊ったオーストラリアのリュー・バウティスタ。高さと距離のあるジャンプが美しく、正確さに加えてエネルギッシュさもある。
 シニア(15〜19才)はグランプリが選出されず、女子20人、男子19人の決勝進出者のうちそれぞれの1位が拮抗していたと事務局からの講評があった。その二人がいずれも日本人だったのは、私達にとってはじつに喜ばしいこと。なお、プリ・コンペティティブ部門(9〜11才)男子でも、増田慈(いつき)が第1位を獲得している。
 女子第1位の栗原ゆうはたいへん優雅なダンサーで、全身のコントロールと細部への配慮が際立っており、何より間のとり方が音楽的ですばらしい。英国ロイヤル・バレエ学校へのスカラシップも獲得し、大きく将来の開けた逸材だ。第2位は同じく『パキータ』を踊ったアメリカのリー・アンダーソン。繊細さでは栗原にひけをとらず、重心が美しく引き上がってポーズに広がりを感じさせる、古典の規範そのもののような踊り手だ。第3位はオーストラリアのビアンカ・スクダモア。歌うように軽やかな踊りで、脚の美しさが際立っている。白と黒の切り替えの衣装は趣味がよく、ピルエットの際にチュチュの縁が面白い視覚効果を上げていた。
 男子第1位は、ドイツのジョン・クランコ・スクールに留学中の速水渉悟。どの動きもぴたりと決まる端正で気持ちのよい踊りで、『ドン・キホーテ』にふさわしい男性的な魅力も十分。後述のガラで踊ったコンテンポラリーの『ソロ・フォー・ディエゴ』もスケールが大きく、すでにプロとなる準備は万端の印象。ダンス・ヨーロッパ芸術賞も併せて受賞し、バレエ団との契約(ヒューストン・バレエの研修団員)を手中にしたのも当然と言えよう。第2位はアメリカのオーステン・アセヴェド。『パリの炎』の出だしのジャンプで180度を超える開脚で観客の目を釘付けにし、回転もトリプルを余裕で含めるなど、高度な技術を見せた。第3位は同じくアメリカのラン・マ。リズム感にすぐれ、『グラン・パ・クラシック』での終盤のアントルシャ・シスの連続では、端正さに加えてパワフルさをも示した。


Shogo Hayami. Photo: Emma Kauldhar

 決選の翌日からは、二つのガラ公演が開催された。そのうち16日のStars of Today Meet the Stars of Tomorrowでは、まずプリ・コンペティティブ、アンサンブル、パ・ド・ドゥの各部門も含めた上位入賞者が晴れ姿を披露するとともに、ユーリ・スメカロフがジュニア女子のケネディ・カラスとシニア男子2位のアセヴェドのために振り付けた新作『Who’s my shadow?』を上演。そして300人を超える決選出場者のほとんどが出演しての、恒例のグラン・デフィレが第一部を締めくくった。
 第二部は、過去の受賞者を中心とする当代のスターたちの出演。まず目を引いたのは、エフゲーニャ・オブラスツォーワとセミョーン・チュージン(ともにボリショイ)の『ファラオの娘』パ・ド・ドゥで、二人の全身のラインの完成度やステップの精度、ユニゾンの美に魅了された。マリインスキー初のイギリス人団員で進境著しいザンダー・パリッシュは、エリック・ゴーチェ振付の『バレエ101』を披露した。基本の5つのポジションや古典バレエの代表的なパ、コミカルなポーズ等を1から100までカウントに従って示し、次にアトランダムに読み上げられる数字に対応して動くと、それが連続した踊りになっていく。最後の“101番”で、疲労のあまり床に仰向けになって手脚を痙攣させるというソロ。一見おふざけながら、終盤のピルエット等はたいへん難度の高いもので、パリッシュのすぐれたテクニックやゆるぎないポジション、そして好ましいパーソナリティを垣間見ることができた。
 ロイヤル・バレエのメリッサ・ハミルトンとエリック・アンダーウッドは、ウェイン・マグレガー振付『クォリア』からのパ・ド・ドゥ。ハミルトンの柔軟性と強靭さを兼ね備えた肢体が、緊迫感とともに空間を支配した。最後を飾った『海賊』のパ・ド・ドゥでは、ABTのイザベラ・ボイルストンとマリインスキーのキミン・キムのテクニックが冴えわたった。アダージョでキムがボイルストンを高々とリフトして舞台を移動していくところの悠然とした美しさも忘れがたいが、コーダでの彼のマネージュは、個々の跳躍の高さと歩幅、描く円周の大きさと速さなど非の打ち所がなく、また一つひとつの動きからパワーをほとばしらせて、興奮を誘った。


表紙は、先のユース・アメリカ・グランプリでの“スターズ・オヴ・トゥデイ・ミート・ザ・スターズ・オヴ・トゥモロウ”ガラで、ウェイン・マグレガー振付『クォリア』パ・ド・ドゥを踊る、メリッサ・ハミルトンとエリック・アンダーウッド。Photo: Emma Kauldhar

 他に、ボールルーム・ダンスのデニス・ドロジュクとアントニーナ・スコビナによるドニー・バーンズ/ゲイナー・フェアウェザー振付の『エスパーニャ・カーニ』、ジョフリー・スタジオ・カンパニーによるアレクセイ・クレメネフ振付の新作『ウィンディ・サンド』、カルヴィン・ロイヤルIII(ABT)とクリスティーナ・シャプラン(マリインスキー)によるアントン・プリマコフ振付の新作『ダブル・ポルカ』、テレサ・ライヒレンとザカーリー・カタザロ(いずれもNYCB)によるエメリー・ルクローン振付の新作『弦楽四重奏曲15番よりメヌエット』を上演。今シーズン末で惜しまれつつABTを引退するパロマ・へレーラはホアン・パブロ・レド(テアトロ・コロン)を相手に、マウリシオ・ウェインロット振付のタンゴ風の『ベラーノ・ポルテーニョ』で官能の火花を散らした。(長野由紀)




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