Vadim_Muntagirov_AS_2015_Japanese



Vadim Muntagirov in Robbins' Afternoon of a Faun. Photo: Emma Kauldhar by kind permission of the Royal Opera House

ワディム・ムンタギロフ Vadim Muntagirov



デボラ・ワイス(以下DW):昨年イングリッシュ・ナショナル・バレエ(ENB)からロイヤル・バレエに移籍なさいました。コヴェント・ガーデンに初めて入った時、プレッシャーを感じましたか?
ワディム・ムンタギロフ(以下VM):ハードだろうと覚悟していたのですが、同じロンドンなのが助かりました。人生を一からやり直すわけじゃなかったし、1週間のうちに、新しい劇場で『眠れる森の美女』のリハーサルに入れました。

DW:ENBではダリア・クリメントヴァとのパートナーシップで知られていましたが、他のダンサーと踊るのはどんな感じしょう?
VM:もちろんダリアは二人といませんし、相手により違いも難しさもありますが、まずは仲良くなって、いい関係を築くようにしています。僕はリラックスするのがあまり得意じゃなく、ダリアにはよく、難しいリフトやピルエットに挑戦する際に「君を借して」と頼んでいました。彼女は僕に自信を与えてくれたんです。その頃と同じように勇気を持って新しいものを試したりすることで、新しい相手とも上手くやっていけるようになりました。今はパートナーがしょっちゅう変わり、関係づくりに時間をかけられませんが、ダリアとは、舞台やバレエを離れても一緒に笑い、語り合い、それが舞台にも反映されていました。



クランコ振付『オネーギン』でレンスキーを踊るムンタギロフ。 Photo: Emma Kauldhar by kind permission of the Royal Opera House


DW:『シンフォニック・ヴァリエーション』の印象は?
WM:今までに踊った最も難しいバレエのひとつです。一見易しそうに見えて、ダンサーにはほんとうにきつい!16〜18分の小品なのに、最後には息が上がってしまいます。スタミナ面がきつくストーリーもありません。ストーリー作品では演じることが優先なのでスタミナをあまり気にする必要はないのですが、それがないと、ステップの質を上げる、高く跳ぶ、よりよいアントルシャ・シスを行うといったことに集中してしまい、その方が疲れるんです。今回は自分なりのストーリーを作り、音楽とともに演じることでより楽に踊れるように心がけました。でもパ・ド・ドゥはやはり難しい。女性をつねに床に触れるか触れないかの高さにキープしなくてはいけない、「死の」リフトです。高いリフトなら持ち上げた高さ固定できて楽になりますが、「死の」リフトでは、筋肉を常に使って緊張を保たなくてはならない。手抜きは出来ないし、呼吸もしにくいほど。このパ・ド・ドゥが終わったら、顔が真っ赤になっていますよ!『シンフォニック・ヴァリエーション』の後は、『眠れる森の美女』を他のバレエ団で踊りました。これも男性にはきつい役のはずが、とても楽に感じられて、汗もかきませんでした。かつて僕の先生が、「観客に踊りの難しさを悟られないように、ダンサーの身体の内側はマシンのようで、見た目は肖像画のようでなくてはならない」と話してくれたものです。



Vadim Muntagirov in Ashton's Symphonic Variations. Photo: Emma Kauldhar by kind permission of the Royal Opera House


DW:日本でもたびたび踊っていますね?
VM:この夏はほとんど東京で過ごします。今年はすでにウェイン・イーグリングの新版『眠れる森の美女』、『ラ・バヤデール』『白鳥の湖』で新国立劇場バレエに3回客演しましたが、夏は世界バレエ・フェスティバルに初めて参加します。全部で10公演もある大きな催し。サラ・ラムと踊りますが、彼女はとても軽いですね!

DW:ロイヤル・バレエへの移籍の決め手となったのは?
VM:タマラ・ロホが芸術監督になる前の一年は不遇で、彼女がきてからも山谷がありました。外部への客演を認めてもらえず、レパートリーの変化のない中で半年間『海賊』ばかり踊っていたら、飽きてしまうし成長している実感が持てない。僕はまだ23、4と若く、チャレンジを必要としていたし、まだ成長できるという自覚もあった。それに、ダリアが僕とのリハーサルをじっと待っているのも辛かったんです。4年間ほとんど全ての舞台で共演してきたから、この状況はお互いに違和感があり、気まずかった。ダリアは、「僕がいるから現役を続けているのに、組めないなら意味がない」と言うんです。それが重荷で限界を感じ、退団を決意しました。それでもタマラはダリアの引退公演に僕を呼んでくれ、アルバート・ホールで『ロミオとジュリエット』を踊りました。いきなりのサヨナラではなくあんなふうに終われて、幸せでした。みんな僕の退団を惜しんでくれたけど、「気にするな、郵便番号が変わっただけだよ!」と言ってくれてた仲間もありましたよ。(訳:長野由紀)