RevJap_Winters



ロイヤル・バレエによるウィールドン振付『冬物語』での、ワディム・ムンタギロフ
Photo by courtesy of the ROH


ロイヤル・バレエ『冬物語』- The Winter's Tale



 
シェイクスピアの戯曲にクリストファー・ウィールドンが振り付けた同作の再演。アマンダ・ジェニングスがお伝えします。

 『冬物語』は、見るからにバレエ台本向きというわけではないが、ウィールドンはこの戯曲を知的に構想し、第一幕で物語の展開の多くの部分を描いている。まずシシリア王レオンティーズと王妃ハーマイオニーが息子マミリアスと遊ぶ短いプロローグが示されるが、ここがとてもよくできている。そこにレオンティーズの子供の頃からの友人であるボヘミア王ポリクシニーズが、もう少し滞在を伸ばすよう請われて加わるのだが、一同が楽しげに過ごす様子はこの後高まっていく暗さと好対照をなしている。ハーマイオニーはポリクシニーズと楽しげに踊るが、それを見たレオンティーズは嫉妬に苛まれて徐々に正気を失っていき、友を追放し、妻を投獄するに至る。息子マミリアスは動揺して生命を落とし、ハーマイオニーもまた我が子を失った衝撃で獄中で亡くなる(かに見える)。レオンティーズは、その直前に産まれた娘パーディタを、貴族アンティゴナスに命じてボヘミアの森に捨てさせる。アンティゴナスは熊に殺され(直接舞台上では描かれないが、よく知られたエピソードだ)、赤ん坊のパーディタは、身に着けていた宝石や形見の品とともに、あたりに住む羊飼い父子に発見される。その財宝の中には、レオンティーズがハーマイオニーに贈ったエメラルドのペンダントも含まれていた。


Bennet Gartside in The Winter's Tale. Photo by courtesy of the ROH

 第二幕はシンプルで美しい。音楽と振付の面で最高の部分がここに含まれていて、民族衣装風のパステル・カラーの見事なコスチューム、圧倒的な存在感の巨木を中心とした森の装置の前で行われる祭り等、視覚的にもすばらしい。ここで私達の前に現れるパーディタは美しく魅力的な娘に成長し、農夫に身をやつしたポリクシニーズの息子フロリゼルと愛し合っている。この場面の振付は、とりわけ強力だ。ウィールドンの語彙は古典の伝統にしっかりと根ざし、伝統舞踊や民族舞踊の要素を用いて目覚ましい効果を上げている。だがこの幕の終わりには、怒りに駆られたポリクシニーズによってフロリゼルの素性が明かされ、パーディタとフロリゼルは羊飼い親子に付き添われてシシリアへと逃亡する。


Vadim Muntagirov and Beatriz Stix-Brunnell in The Winter's Tale. Photo by courtesy of the ROH

 第三幕では、全てが解決し大団円を迎える。ポリクシニーズは激怒してシシリアに乗り込んでくるが、説得されてレオンティーズと和解。そしてアンティゴナスの妻ポーリーナがパーディタのペンダントに気づき、レオンティーズは喜びのうちにパーディタを娘と認める。フロリゼルとパーディタは結婚し、ポーリーナはレオンティーズに、ハーマイオニーにハーマイオニーとマミリアスの新しい彫刻を披露する。そして獄死したと思われていたハーマイオニーが台座から生きた姿を現し、王と王妃は懇願と赦しのパ・ド・ドゥを踊る。ウィールドンの振付は詩的でやさしく、魅力的だ。

 レオンティーズにベネット・ガートサイドというのは完璧なキャスティングで、最高の演技派ダンサーとしての彼の名声は、この役によって確たるものとなった。技術的には脚が強くラインが魅力的で、それが見事なパートナリングをさらに洗練されたものに見せていた。マリアネラ・ヌニェスのハーマイオニーは優雅でやさしい母であり妻として登場するが、夫の変心に当惑し、マミリアスの死の場面ではショックと悲しみに引き裂かれる様子をよく表現。最後の場面では、レオンティーズへの赦しを静謐さと寛大さをもって描いた。ヌニェスは洞察力を備えた表現者へと成熟し、幾重にも層をなした複雑な感情表現と役作りは、今やその圧倒的なテクニックに匹敵するものとなった。これまで私自身は、ヌニェスはいくつかの役柄を楽しんで踊るあまり表現が過剰になる傾向があるように感じていたのだが、彼女はより静謐になり、真のバレリーナと呼ぶべきエレガンスと洗練を蓄えてきたと感じた。彼女の上体やポール・ド・ブラは眼福だ。最近の『ジゼル』での、ナタリヤ・オシポワの表題役を相手のヴィリの女王ミルタの解釈も、じつに素晴らしかった。


Yasmine Naghdi and Luca Acri in The Winter's Tale. Photo by courtesy of the ROH

 ベアトリス・スティックス=ブルネルのパーディタは魅力的で、ワディム・ムンタギロフのフロリゼルも、今回の彼以上のこの役は望むべくもないというほどの完璧さ。その技術は純粋にクラシックな美しさで振付を歌わせ、人好きのするパーソナリティには抗いがたい魅力がある。他にも、第二幕で羊飼いのカップルとして目の覚めるような踊りを見せたアクリ瑠嘉とヤスミン・ナグディ、羊飼い役のトーマス・ホワイトヘッドの演技などが見事だった。

 そして最後に触れて置かなければならないのはポーリーナの描き方で、ここに至ってウィールドンは、彼自身をも超えたと言っていいだろう。この賢く愛に満ちた役は筋の展開上の要であり、ウィールドンは彼女の資質を繊細で優雅な振付と思慮深い演出によってみごとに表現している。ゆえに私たちは、ポーリーナが用心深く妃ハーマイオニーに仕え彼女たちを守っている、その存在感を感じ取ることができるのだ。イツィアー・メンディザバルには、じつは私はこれまで特に好印象は持っていなかったのだが、今回のポーリーナは際立っていた。彼女の解釈は焦点が定まり、長い手脚と表現力豊かな身体は、ウィールドンの振付スタイルにぴったりと合っていた。


Marianela Nuñez and Bennet Gartside in The Winter's Tale. Photo by courtesy of the ROH

 ジョビー・タルボットの魅力的な音楽、ウィールドンの想像力豊かな演出と振付、そしてボブ・クローリーの目を見張るデザインが一体となったこの作品は、今後数年にわたり、ロイヤル・バレエのレパートリーの中核となるだろう。将来的には、現代の古典となるのだろうか?時の審判を待つしかないが、ありうることだと私は思いたい。(訳:長野由紀)