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リカルド・アマランテ振付『ア・フエゴ・レント』を踊る、デイヴィッド・ジョナサンとアイヌラ・アビルガジナ Photo: Nuken Kamashev

アスタナ・バレエ


アフガニスタンの注目のカンパニー。ポーランドでのガラ公演について、ジェシカ・ティーグがお伝えします。


 

 芸術活動のための政府の助成金や基金がかつてないほど広範囲に分配されている現在、バレエ団を立ち上げるのはますます困難になってきている。特にクラシックのカンパニーがいきなり誕生するというのは稀なのだが、カザフスタンでは事情が違うようだ。世界で9番目に広く、“何々スタン”と名のつく国々の中でもっとも経済的に安定している同国で、アスタナ・バレエは2012年の設立以来、首都の活性化を目的とした政府の全面的な支援を受けてきた。現在はクラシックの訓練を受けた約40人のダンサーと新築の劇場、新任の常任振付家を擁し、ヨーロッパやアジア、南米へのツアーも予定されている。レパートリーは「東と西との出会い」ともいうべきもので、ソ連時代の古典バレエの伝統と民族舞踊などの混合に、より西洋的なネオ・クラシカル作品が加わっている。ワルシャワでのアスタナ・バレエ・ガラで、この新興カンパニーの魅力の一端を垣間見ることができた。

 


 Astana Ballet -  Kazbek Akhmedyarov and Tatyana Ten. in A Fuego Lento. Photo:) Olivier Houeix

 

 プログラムには短い民族舞踊も含まれていたが、目玉となるのは、芸術参与で常任振付家であるリカルド・アマランテの作品だ。芸術監督のアッセル・クルマンバエヴァには、より広いダンスの世界と繋がりたいという気持ちがあったのだろう。2016年2月、ゲスト振付家として招いたアマランテが『ガイア』で成功を収めると、無期限で彼と契約を結んだのだった。

 この日まず上演されたのは、三つのパ・ド・ドゥから構成されたアマランテの『愛・恐れ・喪失』。もともとフランダース・ロイヤル・バレエのために作られた、クラシックの語彙を拡張的に用いて時代を超えたテーマを表現した、純粋で美しい作品だ。新加入の男性ダンサーたちが、これ以上はないほどうまく作品に馴染んでいた。パートナリングに説得力があり、それぞれのデュエットが固有の物語を語りつつ、状況によって異なる感情を描く。音楽は舞台上でピアニストのナタリア・シャプレンコが演奏し、エディット・ピアフの軽快さからジャック・ブレルの濃密さへと、振付と手を携えるようにしてうつろう。ディララ・ショマイェワとデイヴィッド・ジョナサンの純粋無垢なカップルはあるかなしかの欲望に導かれて変化してゆき、アイヌール・アビルガジナとイリヤ・マナイェンコの二人は、いったん幻滅が兆すと、相手への軽蔑に突き動かされてゆく。そして最後の最も情熱的なデュエットでは、タチヤナ・テンとカズベク・アフメジャロフが、これみよがしなところのないカリスマ性と驚くべき技術が一体になった独特の魅力で、巨大な舞台を満たした。

 


Astana Ballet in Ricardo Amarante's Gaia.Photo: Nuken Kamashe

 

 団員たちは全員高いレベルのテクニックを有し、ソ連時代のカザフ国立バレエ・アカデミーに遡るワガノワ派の教育の影響がとりわけ強い。アマランテが現在のポストに就くきっかけとなった『ガイア』では、ダンサーの古典的なラインがより開放的な動きのスタイルと融合し、バレエ団が次に進むべき方向性が明確に示されていた。アマランテは女性をポワントでどう踊らせるかを熟知している。観客を魅了し、一方では出演者に新たな冒険をさせられたのもその振付の力量ゆえで、40分の上演時間を通して、ダンサーたちの新たな可能性が証明された。

 内容は母なる地球の自然のサイクルに着想したもので、五つの元素がエレガントで大掛かりなフォーメーションによって擬人化され、叙情的な対話へと変化していく。装置の代わりに映像プロジェションを用いることで、ダンサーたちは軽やかに雲に乗り、熱帯雨林の緑が茂り光のきらめくフロアの上を歩くことができる。作品に登場する女神的な存在は、いくつかの民族舞踊との対比を通して自立的でモダンな印象を与えた。振付がソロやデュエットにより分断されることなく、ほとんどの女性ダンサーが全編を通して舞台上にいたのが印象的で、これは振付の面で賞賛すべき成果だといえる。

 『ガイア』に続くのは、男性の魅力を打ち出した『ア・フエゴ・レント』。主にアルゼンチン音楽を用い、直線的で自信に満ちたタンゴのラインをバレエ的な優雅さと融合させた作品で、バランシンやフォーサイスのネオ・クラシカルな遺産からアマランテが受けた影響が明らかな一方、彼自身のオリジンであるラテンの伝統も、全体に散りばめられた鋭い音楽的アクセントに現れていた。ひじょうに力強い男性デュエットがあり、ジョナサンとマナイェンコが完璧に息の合ったところを見せた。またアフメジャロフと脇田紗也加は、折々にスパイスの効いた踊り。全体的に女性も男性に負けず劣らずパワフルで、燃えるようなエネルギーを、交互に舞台を占めながら発していた。(訳:長野由紀)