Japanese_Article_Schools_AS16

ノーザン・バレエ・スクールによる『ジゼル』  Photo: Caroline Holden.

<ロイヤル・バレエ・スクール>

年度末恒例の、学校公演。ロイヤル・バレエ・スクール、セントラル・スクール・オヴ・バレエ、ノーザン・バレエ・スクール、イングリッシュ・ナショナル・バレエ・スクール、そしてワガノワ・アカデミーについて、デボラ・ワイスとキャサリン・ポーリックがリポートします。


 その三年生のためにデイヴィッド・ビントリーが振り付けた『スプリング・タイム』はいかにもビントリーらしいチャーミングな作品で、生徒たちは控えめなユーモアと難しい箇所も無理なく踊りこなす技術をもって、ひじょうにイギリス的なスタイルでこれを踊った。ジョセフ・シセンスは力強くスマートで、宙に浮くように”やすやすと”踊り、来シーズンからロイヤル・バレエに入団するのももっともと思わせた。前半のハイライトはケネス・マクミラン振付の『ソワレ・ミュージカル』で、主演は柳沢郁帆(やなぎさわ・かほ)とジャコモ・ロヴェロ。柳澤は(昨年の『ランデヴー』と同様に)見事なエポールマンを見せ、またロヴェロとのパ・ド・ドゥはお手本のようだった。彼女がロイヤル・バレエではなくスウェーデン王立バレエに入団するというのはちょっとした驚きである。彼らの益は我々の損、である。


The Royal Ballet School - Kaho Yanagisawa and Giacomo Rovero in MacMillan’s Soirées musicales.
Photo: Johan Persson.


<バレエ・セントラル>
 セントラル・スクール・オヴ・バレエの上演団体である同団は、クリストファー・ゲイブル振付の『セレブレーション』、『パキータ』のパ・ド・トロワという難度の高い古典技法の二作を含む多彩な作品を上演した。完成度と音楽的なフレージングの点では両作とも狙いどおりの成果を挙げたが、これは、キャロル・ゲイブルの注意深い上演指導とコーチングに負う部分もあるに違いない。『セレブレーション』ではヴァレリー・ヨウが傑出しており、アラベスクのラインの美しさ、脆さ、温かい存在感で舞台を照らした。ヨウは、ネオクラシカルな表現の試みであるサラ・マシューズ振付『スーパーストラクト』では、このジャンルにも熟達したところを見せた。前半の最後は、伊藤舞、佐野奏実(さの・かなみ)、マーク・サマラスの実力ある三人による『パキータ』が締めくくった。佐野はピルエットをやすやすとこなし、またサマラスは万能型の才能の持ち主で、ジュテは美しく、またパートナリングも強いことは、コンテンポラリー作品でも証明された。


Central School of Ballet - Mai Ito, Kanami Sano and Mark Samaras in Paquita. Photo: Bill Cooper

<ノーザン・バレエ・スクール>
 パトリシア・マクドナルドのプロデュース、エマ・ウッズの監督の下、21もの作品を次々と上演した同校。生徒たちは多岐にわたる種類のダンスを披露した。最初の『ジゼル』第二幕の抜粋では、群舞はよく訓練されていたものの、特に腕にロマンティックなスタイルが欠けていた。ジゼルのカサイ・ユキホ、ミルタの杉本さやかの二人はしっかりとした技術の持ち主で、ジャンプは強くブレは効果的だった。役作りの試みはほとんど見られなかったものの、ともに踊りだけで説得力があり、またアルブレヒトのカルロス・フェリペ・オリベイラは、パートナリングという責務を男らしく務めた。ヴィリたちが交差する有名な場面では、ホップしながらのアラベスクを、生徒たちの群舞がみごとな規律をもって行ったことにも触れておきたい。


English National Ballet School in Raymonda Grand Pas Classique. Photo: Tim Cross

<イングリッシュ・ナショナル・バレエ・スクール>
 今回の公演での『ライモンダ』によって、同校は古典における最高級の成果を示した。主演のライモンダ役エミリー・ズクキとジャン・ド・ブリエンヌ役ティモシー・ダトソンは、スタイルとテクニックの両面ですぐれた指導を受けていることが一目で分かる。エレガントなこの二人以外にも、第二ヴァリエーションのクレア・バレット、男性パ・ド・カトルのドリュー・ジャクソン、ハンノ・オパーマン、ヴァレリオ・パルンボ、リカルド・ロディギエロが目を引いた。ヴァリエーションに簡単なものは一つもなく、それぞれの難しさがあるが、全体を通して高レベルで踊った各学年の生徒、そしてそれぞれの才能を引き出し発揮させた校長のサマラ・サイディと教師陣にも、満点を付けたい。


Vaganova Academy - Altona Kovalyova, Egor Gerashenko and Roman Malyshev in The Fairy Doll.
Photo: Valentin Baranovsky/State Academic Mariinsky Theatre


<ワガノワ・アカデミー>
 サンクト・ペテルブルクでは、同校校長のニコライ・ツィスカリーゼが『人形の精』を演目に選んだ。1903年にニコライとセルゲイのレガート兄弟によって作られたチャーミングな一幕作品で、あらゆる年齢の生徒たちのための踊りがある。ペテルブルクのとある人形店では、ショウウィンドウにさまざまな品物が飾られ、買い手のつくのを待っている。ある夜ニコライ・ヴォロビヨフ演じる店員がその店内で、生命を吹き込まれた人形たちの世界に迷い込む。1990年代にはキーロフ・バレエが本作のメインのパ・ド・ドゥ(二人のピエロがピンクの衣装の人形の精の心を射止めようと競う)をツアーで上演したものだったが、今回その楽しい場面を踊ったのはアリョーナ・コヴァリョーワ。175cmを超える長身の精美なダンサーで、甲のアーチは完璧、ポール・ド・ブラも非の打ち所がない。すらりとした彼女は、ボリショイへの入団が決定している。彼女に求愛するピエロは、イーゴリ・ゲラシェンコとロマン・マリシェフ。心温まるコミカルな場面を胸のすく明晰さとユーモアを持って踊った。アリョーナ・レディアク(同じくボリショイへ)は穏やかな中国人形を正確に、ユリア・ゾロティクは華やかなフランス人形を開放感たっぷりに踊った。 (訳:長野由紀)




Graduation Performances at the Royal Ballet School, Central School of Ballet, English National Ballet School and the Vaganova Academy by Deborah Weiss and Catherine Pawlick