DANCE EUROPE 日本語版


English National Ballet - Shiori Kase in Le Corsaire.Photo: Emma Kauldhar
Dance Europe 日本語版
本誌の日本語ページ、及び最新情報を掲載します

 


English National Ballet - Fabian Reimair, Alina Cojocaru, Isaac Hernández and Begoña Cao in Giselle. Photo: Emma Kauldhar 

19 世紀の名作の新演出。


 アクラム・カーンは、今回『ジゼル』という作品を自ら選んだことで、深淵で古典的な領域へと新たに踏み込んだ。カタカリとコンテンポラリー・ダンスに由来する彼独特の力強い泥臭さはもちろん健在だが、そこにトウシューズが加わった。そしてカーンは、愛と裏切りと復讐と許しの物語を社会的不平等と階級差の結果と捉え、独自の世界を作り上げたのだ。

 語のあらゆる意味において、この作品を観ることは、振付家とダンサーはもとより、視覚、聴覚、身体感覚のすべてが融合した文化的体験だ。とりわけ、ヴィンチェンツォ・ラマーニャの音楽が素晴らしく、アダンの原曲のライトモチーフの断片が、メロディアスなオーケストラ、工場の音景、東洋的な短調、鋭い金属音などと、随所で絶妙に配され結びついている。衣装およびヴィジュアル・デザインはティム・イップによる。 続きを読む READ MORE


 

ボリショイ・バレエ『じゃじゃ馬馴らし』(ジャン=クリストフ・マイヨー振付)でのウラディスラフ・ラントラートフ 
Photo: Emma Kauldhar 

ウラディスラフ・ラントラートフー


ウラディスラフ・ラントラートフといえば、洗練されたジークフリート王子や颯爽としたバジルが思い浮かぶ。ボリショイの初の訪英から60周年となるこの夏、ロンドンでもこの二役を踊った彼は、だがおとなしくそこだけに収まっているような器ではない。ジャン=クリストフ・マイヨーはボリショイ・ダンサーのステレオタイプなイメージを打破すべく、ペトルーキオを“ヴラド”(ラントラートフ自身、このニックネームで呼ばれるのが好きだという)にあてて造形した。慌ただしいシーズンの最中、クラスと『パリの炎』のリハーサルの間に幸運にもスタジオが空いて、インタビューが実現した. 続きを読む READ MORE


 

Ballet Bolshoi - Anna Tikhomirova in Ratmansky's Flames of Paris

ボリショイのロンドン公演

『ドン・キホーテ』『パリの炎』『じゃじゃ馬馴らし』について、リディヤ・ラデツキーがお伝えします。 ボリショイの初のロンドン訪問から60周年にあたる今年、セルゲイ・フィーリンから芸術監督の職を引き継いだマハルベク・ワジーエフがロンドンに引っさげてきたのは、五つの全幕バレエである。 続きを読む READ MORE



The Royal Ballet School - Kaho Yanagisawa and Giacomo Rovero in MacMillan’s Soirées musicales.
Photo: Johan Persson.

<ロイヤル・バレエ・スクール>

年度末恒例の、学校公演。ロイヤル・バレエ・スクール、セントラル・スクール・オヴ・バレエ、ノーザン・バレエ・スクール、イングリッシュ・ナショナル・バレエ・スクール、そしてワガノワ・アカデミーについて、デボラ・ワイスとキャサリン・ポーリックがリポートします。

 その三年生のためにデイヴィッド・ビントリーが振り付けた『スプリング・タイム』はいかにもビントリーらしいチャーミングな作品で、生徒たちは控えめなユーモアと難しい箇所も無理なく踊りこなす技術をもって、ひじょうにイギリス的なスタイルでこれを踊った。ジョセフ・シセンスは力強くスマートで、宙に浮くように”やすやすと”踊り、来シーズンからロイヤル・バレエに入団するのももっともと思わせた。前半のハイライトはケネス・マクミラン振付の『ソワレ・ミュージカル』で、主演は柳沢郁帆(やなぎさわ・かほ)とジャコモ・ロヴェロ。柳澤は(昨年の『ランデヴー』と同様に)見事なエポールマンを見せ、またロヴェロとのパ・ド・ドゥはお手本のようだった。彼女がロイヤル・バレエではなくスウェーデン王立バレエに入団するというのはちょっとした驚きである。彼らの益は我々の損、である。
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Noism - Sawako Iseki in La Bayadère. Photo: Kishin Shinoyama.

ラ・バヤデール — 幻の国』Noism

 下敷きとなっているのは、もちろん古代インドを舞台とするロシア古典バレエの同名の名作。その悲劇の発端となったカースト(身分差)を、架空の国での民族間の対立に置き換えた、芸術監督金森穣による新演出版である。

 ひとりの老人ムラカミが回想するのは、かつて繁栄を誇ったマランシュ国。そこではヤンパオという名の帝国の支配のもと、その傀儡である皇帝、高貴な戦士、踊り子たち、亡命の聖職者、地方の軍閥ら異なる民族の人々が、ヤンパオという名の帝国の支配下で偽りの調和のもとに暮らしている。戦士バートル(原典のソロル)は踊り子ミラン(ニキヤ)と密かに愛し合っているが、五族の調和を名目に皇帝の娘フイシェン(ガムザッティ)との婚約を強いられ、ミランに横恋慕するガルシン(大僧正)の密告から、ミランは殺されてしまう―—続きを読む READ MORE




Northern Ballet - Dreda Blow and Javier Torres in Cathy Marston's Jane Eyre.

ジェーン・エア - Jane Eyre 

キャシー・マーストン振付によるノーザン・バレエの最新作を、デボラ・ワイスがリポートします。

文学愛好家で、シャーロット・ブロンテの記念碑的名作『ジェーン・エア』を知らないという人はまずいないだろう。だが読んだことはないという人でも、このバレエなら物語をたやすく理解できるに違いない。言語をダンスに翻訳してゆくマーストンの手腕は卓越しており、何より、動きによって人物像がありありと描き出されているからである。続きを読む READ MORE




The Royal Ballet - Federico Bonelli in Liam Scarlett's Frankenstein.
Photo: Emma Kauldhar by courtesy of the ROH

『フランケンシュタイン』- Frankenstein

リアム・スカーレット振付の、ロイヤル・バレエによる新作。デボラ・ワイスはこれを、高く評価しました。

 メアリー・シェリーの同名の小説に基づく『フランケンシュタイン』は、リアム・スカーレットがロイヤル・バレエのために初めて手がけた全幕バレエである。音楽はロウェル・リーバーマンに委託した新曲、素晴らしい(そしてところどころ恐ろしい)美術はジョン・マクファーレン、題材にふさわしい神秘的な照明はデイヴィッド・フィン、そして比類ない効果を上げたプロジェクションはフィン・ロスによるもので、ひじょうに立派な出来栄えの作品だった。何より満足させられたのは、舞台上で起こっていることを理解するために、観客があらすじを読む必要がなかったことだろう。筋の運びはじつに明快で、なにより、じつに面白かったのである。続きを読む READ MORE